食品安全マネジメントシステム構築上の注意点
1.参考書の規格解釈を丸呑みしない
「規格解釈」は、著者が規格をわかりやすいように文字通り「解釈」して記載しているものです。その解釈には著者の経験や考え方が反映しています。規格は、食品製造に関連する組織に広く適用されるように作成されていますから、物事をわかりやすく伝えようとすればするほど、ある程度組織の業界や規模をイメージして作らざるを得ません。従って、「解釈」の内容はすべての組織に当てはまるものではなく、また唯一の方法でもないことを留意しましょう。1冊だけではなく、複数の参考書を比較すると、規格の意図が見えてくるかもしれません。
2.他社事例や参考書例をそのまま流用しない。
世の中に全く同じ組織はありません。成り立ち、理念、方針、製品、地域、顧客、規模、設備、文化・風習など必ず違いがあります(そうでなければ存在意義がありません)。従って、他社の事例や考え方が全くそのまま当てはまることはないでしょう。参考書などに書かれていることはマネジメントシステムの一部であることがほとんどです。他のシステムとの関連性まで描き切れていないことが多いでしょう。素晴らしい事例ばかりが記載されていることがあります。また、概ね大規模組織が事例として記載されていることが多く、大規模組織では必要な手順や記録も小規模の企業では不要なことがあります。あくまで「参考」にとどめてください。HACCPシステムについては、同業他社の情報は真似できるところが多いと思いますが、これも採用前(または定期的)にムリ、ムダ、ムラがないかチェックする必要があるでしょう。
3.現在の自社の管理手順ありきで構築しない
現在の管理手順で重大なトラブルやクレームが発生していないので、そのまま管理手順として採用することも一つの考え方だと思います。振り返って現在の管理手順がなぜ採用されているかを見ると、多くは過去のトラブルやクレーム対策として付加されている内容である、帰納的な考え方に基づいていることに気づくでしょう。HACCPシステムは、予め管理すべきハザードを明確にして、そのハザードを管理する重要工程を決定して管理するという演繹的な考え方です。従来の管理手順とは、ハザード管理に対する考え方が全く異なります。管理すべきハザードどうやって管理すれば十分なのかがわかれば、現在の作業の中でやらなくてもいい作業が見えてくるかもしれません。これからHACCPシステムを導入する組織は「ハザード分析」という強力な武器を手に入れるわけですから、是非十分に活用し、従来作業のムリ、ムダ、ムラを除去するとともに、一つ一つの作業の目的を確認してください。またやっぱりすべてやらなければならないことが再認識できるかもしれません。その場合、あらためて先輩の論理性に対して敬意を表しましょう。
4.事務局だけががんばらない
あなたは、他人からの指示や命令に対して、見ていないところで手を抜いたり、守らないで済ましてしまった経験はありませんか?人は他人が決めたルールに対しては、「守りたくない」「自分のやり方でやりたい」という意識が働きます。
マネジメントシステム構築を事務局(主に品質保証担当)が、主導的にやってしまうと、現場は、「事務局が決めたルールに従ってやればいい」というような受け身な態度が生まれてしまいます。
食品安全マネジメントシステムは、「前提条件プログラム(一般衛生管理)」に対する要求が非常に多いのが特徴です。つまり、手洗いや清掃という基本ルールを要員一人一人が守ってもらうことで成り立つシステムです。そのためには、基本ルールがどうして必要なのか、全員に理解してもらう必要があります。
残念ながら受け身の態度からは、積極にルールの意図を理解しようという意識は低くなるでしょう。その結果、事務局からは「現場はいうことを聞いてくれない」、現場からは「面倒くさいルールばかり作りやがって」という状況が生まれがちです。
事務局としてはマネジメントシステム構築を急ぎたいところですが、現場を巻き込んだ構築活動を意識しましょう。できれば、基本ルールは現場から提案させるくらいの方がいいでしょう。事務局は文書化や様式の改善など、現場の意見の明確化に努め、「現場が主体」の活動にしてください。
FSSC22000においては、非通知審査があります。常に事務局がサポートできるわけではないのです。現場の自主自律を促す運用をしましょう。